電子帳簿保存法に則った書類の保存方法では、契約書も、保存要件を満たすことで電子保存ができるようになります。
紙で保存していた契約書をデータ化して保存したいときは、電子帳簿保存法における保存要件をしっかりチェックしておきましょう。
そこで今回は、電子帳簿保存法では契約書の保存方法はどうなるのか、具体的な保存方法と守るべき要件を紹介していきます。
あわせて、電子帳簿保存法に対応して契約書を電子化するメリットとデメリットも解説していくため、電子契約にすべきか悩んでいる企業担当者はぜひチェックしてみてください。
目次
電子帳簿保存法における契約書の保存方法
はじめに、電子帳簿保存法ではどのように契約書を保存できるのか整理しておきましょう。
契約書は電子帳簿保存法では、取引関係書類に当てはまるため、具体的な発行形態によって以下のような保存方法があります。
- スキャナ保存
- 電子取引の電子データ保存
いずれも保存要件は大きく異なるため、十分に注意が必要です。
それぞれの具体的な要件の内容を解説していきます。
1. スキャナ保存
紙で受け取った契約書は、電子帳簿保存法においてスキャナ保存が可能になります。
スキャナ保存では、保存要件を満たしたスキャナで契約書をPCなどに取り込み、データ化することで保存する流れです。
なお紙で受け取った契約書とは、郵送や対面などで契約を交わし、紙の状態でやり取りした契約書のことを指しています。
紙の契約書のスキャナ保存については、保存要件は以下のようになります。
- 入力期間制限
- タイムスタンプ付与
- 200dpi以上でスキャン
- RGBの256階調以上のカラー画像でスキャン
- バージョン管理
- 帳簿との相互関連性がわかる
- システム概要書の備え付け
- 見読可能装置等の備え付け
- 検索性確保
- 速やかに出力できる
契約書は電子帳簿保存法では取引関係書類に分類されますが、取引関係書類はさらに「重要書類」と「一般書類」に分かれる仕組みです。
契約書が該当するのは重要書類で、重要書類と一般書類では保存要件に違いがあるため、保存の際は間違えないように気をつけてください。
なお、スキャナ保存を行った契約書の原本に関しては、保存が正しく完了している状態であれば破棄が可能です。
2. 電子取引の電子データ保存
電子帳簿保存法では、電子取引の契約書は電子データのまま保存することが原則となります。
電子取引の契約書とは、紙ではなく、電子的にやり取りした契約書のことを指します。
たとえば以下のような場所でやり取りした契約書は、みな電子取引の契約書に当てはまります。
- メール
- チャットツール
- クラウドソーシングサービス
- 電子契約システムなど
電子取引の契約書については、電子ファイルが原本で、紙に出力したものは複製となり、電子ファイルでの保存が必要となります。間違った保存方法をしないように注意してください。
電子取引の保存要件は下記のようになります。
- 改ざん防止措置
- 検索性の確保
- 見読可能装置の備え付け
改ざん防止装置とは、タイムスタンプ付与や訂正削除履歴機能のついたクラウドストレージへを保存することなどを指します。
上記の要件を満たせば、電子取引の契約書は電子データのまま保存することが可能です。
電子帳簿保存法に則り契約書を電子保存するときのポイント
契約書は、電子帳簿保存法に則り電子保存が可能ですが、実際に保存するとなった際は以下のポイントを押さえるようにしてください。
- 電子帳簿保存法対応のシステムを導入しよう
- 適切な保存場所を確保しよう
実際に電子保存を始める際は、電子帳簿保存法について理解を深めて保存要件を把握するだけでなく、やるべきことがさまざまあります。
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
1. 電子帳簿保存法対応のシステムを導入しよう
電子帳簿保存法に対応して契約書を電子保存する場合は、基本的にシステムの導入が必要になります。
理由は以下のとおりです。
- システムなしでは要件を誤って保存する恐れがある
- システムがあったほうが効率的に契約書を電子化できる
- パソコンに保存しているとパソコンが壊れたときにデータを失う
手作業で要件を逐一確認しながらスキャナ保存・電子取引の電子データ保存することも可能ですが、やはりシステムがなければ、要件を誤って保存してしまう恐れがあります。またパソコンのストレージにそのまま保存する形であると、パソコンの故障などに備えてバックアップを取る必要があり手間が増えます。故障時の復旧作業、ストレージがいっぱいになったときの増設作業、データ移行作業などの手間が増えます。
契約書を電子保存するにあたって、要件が満たされていないと、電子帳簿保存法違反になるため要注意です。
また、システムがあったほうが効率的に契約書を電子化できることも重要なポイントといえます。
たとえばスキャナ保存する場合、大量に契約書があるときは、手作業で要件を確認しながらスキャンと保存作業を行うのでは効率が悪いのは明らかです。
そんなとき電子帳簿保存法対応の電子契約システムなどがあれば、電子契約と契約書の電子保存の両方を効率的に進められるでしょう。
2. 適切な保存場所を確保しよう
電子帳簿保存法に対応して契約書を電子保存する場合は、適切な保存場所を確保することも必要です。
大量に契約書がある場合は、外部メディアやハードディスク内では、容量が足りない場合があります。
契約書を電子保存する場所といえば、外部メディアやハードディスク以外ではクラウドストレージが挙げられるでしょう。
クラウドストレージに保存すれば、社外からでも契約書データが閲覧できるため、業務効率が上がる可能性があります。
しかしそうはいっても、クラウドストレージは情報漏洩などのリスクが伴うのも事実のため、適切なセキュリティ対策を施して利用することが重要です。
電子帳簿保存法に則り契約書を電子化するメリット
電子帳簿保存法に対応して契約書を電子保存すれば、業務を進めるにあたって、以下のように多くのメリットが見込まれるでしょう。
- 業務効率化につながる
- ペーパーレス化による経費削減が実現する
- 企業のイメージアップにつながる
- リモートワークを進めやすくなる
- BCP対策になる (BCP:事業継続計画、災害や事故でも事業が継続できるように)
契約書を電子化するか決断できないときは、電子保存のメリットを整理しておくと良いでしょう。
上記のメリットを、詳しく以下から解説していきます。
1. 業務効率化につながる
電子帳簿保存法に則って契約書を電子保存すれば、業務効率化の実現につながります。
便利なITシステムが業務の現場に取り入れられるようになった現代では、書類の電子保存は、総合的に業務効率を高めるきっかけになります。
まず、電子帳簿保存法対応で契約書を電子化する場合は、多くの企業が電子取引システムを取り入れることになります。
電子契約に移行すれば、クラウド上で契約書を管理でき、最終的な電子保存までサポートしてもらえることがメリットになります。
契約業務と契約書保存業務がまとめて電子契約システムで完結するため、一元管理により、業務はスムーズに進むでしょう。
さらに電子契約システムはクラウドサービスのため、社外からでも柔軟に操作できることが強みです。
業務効率化につながるポイントは多く、契約や電子保存に関する煩雑な作業をわかりやすく、かつスムーズにしてくれるでしょう。
2. ペーパーレス化による経費削減が実現する
契約書を電子保存すれば、ペーパーレス化につながるため、経費削減が実現するでしょう。
基本的にすべての契約書を電子取引に移行したとすれば、少なくとも自社で用意する契約書は、プリントアウトする必要がなくなります。
結果、紙代やインク代、ハンコ代、紙保存の際に必要だったファイル代などが削減されるため、コストカットの効果は大きいと考えられます。
3. 企業のイメージアップにつながる
契約書の電子保存は、最終的に企業のイメージアップにもつながるでしょう。
環境に配慮し、ペーパーレス化を推進する企業であることをPRすれば、顧客へのイメージアップにつながる仕組みです。
契約を取り交わす際は、「環境に配慮し、ペーパーレス化を推進しているため、電子契約を行っています」と伝えることが効果的です。
これまで紙でやり取りしていた契約書がすべて電子契約になれば、実際に排出される紙のゴミは減るため、そういった状況を実感するだけでも企業として社会的責任を果たす良いきっかけになるはずです。
4. リモートワークを進めやすくなる
契約書の電子保存は、リモートワークを推進する際も効果的といえます。
電子契約を取り入れたりその他の書類のクラウド保存を行ったりすれば、社内にいなくても、問題なく業務を進められるでしょう。
電子契約の場合、捺印のために出社する必要もありません。
コロナ禍を機に、リモートワークは一つの働き方として多くの企業に広まったため、実際にこれからリモートワーク化を進めようとして取り組みを強化している企業は多いでしょう。
その際に、電子契約などのクラウド環境で業務を進められるサービスは欠かせないものです。
5. BCP対策になる
契約書の電子化は、BCP対策としても有効といえます。
BCP対策は、災害などの万が一の事態に備えて、事業の継続性を確保するために備えを強化する対策のことです。
BCP対策としてできることはさまざまありますが、そのうちの一つに、書類のデータ化があります。
紙の書類をそのままファイリングして保存していると、被災したときに、書類紛失・破損の恐れがあります。
しかしデータ化を進め、特にクラウドストレージに保存しておけば、被災してもデータがなくなる可能性は低いといえます。
大事な書類がデータとしてクラウドに残っていれば、万が一のことがあっても事業の継続性が確保されるため、BCP対策の意味でも契約書の電子保存は有効といえます。
電子帳簿保存法に則り契約書を電子化するデメリット
電子帳簿保存法に対応し、契約書を電子化する際は、以下のデメリットにくれぐれも注意が必要です。
- クラウドで保存する際はセキュリティに注意が必要
- 業務フローが変わることで契約業務が混乱する恐れがある
契約書の電子化には多くのメリットがありますが、デメリットとして注意すべき点を見逃してしまうと、電子保存にあたってさまざまトラブルに見舞われる可能性があります。
デメリットを一つひとつ見ていきましょう。
1. クラウドで保存する際はセキュリティに注意が必要
電子帳簿保存法に則り、契約書の電子保存をするときは、クラウドのセキュリティに十分に注意したいところです。
保存先にクラウドストレージを選んだ場合、注意して管理しなければ、保存した契約書データはさまざまな脅威にさらされる可能性があるためです。
オンライン上にデータがあるクラウドストレージは、通信の傍受や不正アクセスなどの被害を受ける恐れがあるため、セキュリティ水準の高いサービスを活用することが重要です。
データや通信の暗号化、管理者による権限付与など、高水準のセキュリティ機能を活用できるクラウドストレージのほうが、より安心感を持って運用できます。
クラウドで電子保存した契約書を管理すれば、社外からでもアクセスできて大変便利ですが、その分リスクが伴うこともしっかり理解しておきましょう。
2. 業務フローが変わることで契約業務が混乱する恐れがある
契約書を電子化した場合、業務フローが大幅に変わる可能性があるため、現場の混乱に注意しましょう。
今まで紙でやり取りしていた契約書が完全に電子に移行すれば、電子契約システムを使った業務フローを新たに覚えなければなりません。
そのため状況によっては、一時的に業務効率は落ちる可能性があります。
業務フローはしっかりと見直したうえで、できる限り混乱を最小限に抑えた移行計画を立てることが重要です。また導入直後は作業者が業務フローに慣れるまで、こまめに正しい運用になっているか権限のある人がチェックをしてゆくことが重要です。
まとめ
電子帳簿保存法では、契約書は取引関係書類として「電子保存できる」とされています。
紙で発行された契約書はスキャナ保存ができ、電子取引の契約書に関しては、電子データのまま保存することが義務付けられています。
そのため契約書の電子化を検討する際は、まずどのような保存方法があるのか、そしてどのような用件で保存しなければならないのかを明らかにしましょう。
なお、電子帳簿保存法に即して各種書類を電子化するか悩んでいるときは、メリットとデメリットを理解することも大切です。
契約書は取引関係書類として重要な役割を持つ書類のため、どのような保存方法が適切かとく考えたうえで、電子化の検討を進めましょう。
・参考:電子帳簿保存法における電子契約の方法と注意点
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