
クラウドストレージのセキュリティについては、さまざまな不安要素があるものです。
本当に安全なのか、セキュリティリスクは何があるのかなど、導入を検討する際は懸念を抱く人も多いでしょう。
そこで今回は、クラウドストレージのセキュリティ水準は高いのか解説したうえで、想定されるリスクと対処法、具体的なセキュリティ機能の種類などを紹介していきます。
クラウドストレージを運用するうえで想定される脅威を理解したうえで、必要な対策を実践し、安全な運用を心がけましょう。
目次
クラウドストレージのセキュリティ水準は高いのか
クラウドストレージを取り入れて業務効率化を図る際は、セキュリティ上の問題が気になるものです。
「クラウドストレージはセキュリティ上安全に使えるものなのか」「クラウドストレージは一定の危険があるからこそ、積極的に活用すべきなのか」など、導入・運用を始める際はさまざまな懸念をしている人は多いでしょう。
クラウドストレージのセキュリティ水準については、以下のようなポイントが挙げられます。
- セキュリティに優れたクラウドストレージサービスは多い
- オンプレミス環境に保存したほうが安全性はより高い
クラウド環境にはさまざまなリスクがあるため、課題を解決すべく、さまざまなセキュリティ機能を充実させているクラウドストレージは多いです。
そのため機能をフル活用して運用すれば、クラウドストレージはリスクを抑えたうえで利用できるといえます。
しかしながら、そうは言ってもクラウドとオンプレミスでは、オンプレミスのほうがセキュリティ上安全性が高いことは事実です。
自社サーバーを構築して大容量の保存領域を作れば、社外からのアクセスはできないものの、より閉じられた環境だからこそセキュリティ水準は高まるでしょう。
そのためクラウドストレージを利用する際は、クラウドそのもののリスク・課題を理解したうえで、セキュリティに関する機能を積極的に活用することが重要です。
クラウドストレージのセキュリティ上の懸念点
クラウドストレージを活用する場合は、まず、セキュリティ上の懸念点について理解を深めておきましょう。
セキュリティ面の懸念点やデメリットを理解していなければ、セキュリティ水準を高めたうえでのクラウド運用はできないためです。
クラウドストレージには、主に以下のような懸念やリスクがあります。
- 情報漏洩
- サーバーダウン・通信障害
いずれも業務に大きな支障をきたすリスクのため、事前の理解は必須といえます。
それぞれどのようなリスクがあるのかを整理していきましょう。
1. 情報漏洩
まず、クラウドストレージを利用する際は、情報漏洩のリスクが伴います。
情報漏洩を防ぐための豊富なセキュリティ機能はありますが、オンライン上に保存領域を設けてファイルを管理するという性質上、情報漏洩の危険性はどうしても上がってしまうためです。
自社サーバーにファイルを保存していた場合だからといって安心できません。ウィルスやマルウェアの侵入から情報漏洩が起きたり、VPN接続を許可しているとそのセキュリティーホールから侵入されたりすることがあります。SDカードやUSBメモリに保存などの外部メディア保存は、そのメディアを紛失するリスクがあります。
クラウドストレージでファイルを保存したり共有したりする際は、その特性を活かし、社外からのアクセスも頻繁に行われるでしょう。
クラウドストレージでは、IDやパスワードが漏洩してもアクセスできないようにする端末認証などの多要素認証が必要となるでしょう。
情報漏洩はビジネスにおいて大きな損失につながる恐れがあり、会社の信頼性やイメージをよりマイナスなものにし得るものです。
クラウドストレージを活用する際は、そういった問題が起こりえないようにする安全なサービスを選定することが重要です。
2. サーバーダウン・通信障害
クラウドストレージには、一定のサーバーダウンや通信障害のリスクが伴います。
もしクラウドストレージに何らかの障害・不具合が起これば、保存していたファイルは一時的に閲覧不可となる恐れがあります。
自社ファイルサーバーに保存していた場合もサーバーの故障等でアクセス不能になる場合があります。この場合、ファイルサーバーのバックアップ体制が重要になります。また障害対策のための運用マニュアルの作成、障害時の復旧作業、ストレージ不足のための増設作業、OSのセキュリティパッチの適用等の運用にコスト(人件費)をかける必要があります。これらは非常に高い専門知識が必要となります。サーバーダウンの復旧作業時間は、一般に自社ファイルサーバーよりもクラウドストレージの方が短いでしょう。
クラウドストレージで利用できるセキュリティ機能とは

クラウドストレージには、セキュリティ水準を高めるためのさまざまな機能が取り入れられており、上位プランであればあるほどすべての機能を活用できることが特徴です。
そのためここからは、クラウドストレージで利用できる主なセキュリティ機能を見ていきましょう。
主なセキュリティ機能は、以下が挙げられます。
- 端末認証などの多要素認証
- 暗号化
- アクセス制限
- 接続元IP制限
- 事故や不正調査のための監査ログ機能
複数の機能を活用してセキュリティを強固なものにすれば、クラウドストレージに多くのファイルを保存していても、リスクを抑えられる可能性があります。
そのためには各機能の特徴を知っておくことが重要なため、それぞれどのような機能なのか、詳細を見てみましょう。
1. 多要素認証
多要素認証とは、複数の要素を活用した認証を求めるシステムになります。
通常、システムにログインする際はIDとパスワードが必要ですが、昨今のセキュリティ環境では1要素のみでは不十分な場合があります。
万が一他人にIDとパスワードを盗まれたり、推測されたりするようなことがあれば、簡単にシステムにログインできてしまうためです。
多要素認証では、知識情報と所持情報、生体認証があり、2つ以上を組み合わせることで認証のセキュリティを強固にすることが特徴です。
特に強固なのが許可された端末(PC)からのみアクセスできる端末認証機能でしょう。
2. 暗号化
セキュリティ水準の高いクラウドストレージは、暗号化システムが利用できる場合もあります。
暗号化が可能なクラウドストレージでは、転送・保管の際にデータは暗号化されており、第三者からの不正アクセスやデータ改ざんなどを防ぎます。
暗号化されたデータは、万が一外部に持ち出されても、簡単に解読することはできません。
セキュリティ水準の高いクラウドストレージには、このような暗号化機能が標準搭載されていることが多く、強固なセキュリティでデータを保護してくれます。
関連記事:クラウドストレージの暗号化とは?必要性と暗号化の種類・注意点を解説
3. アクセス制限
クラウドストレージ上では、アクセス制限の機能を活用することでもセキュリティ水準を高められます。
管理者を設定し、それぞれのファイル・フォルダのアクセス権限を管理して各種制限をかければ、権限を与えられた人しかファイルにはアクセスできません。
当然編集にも編集権限が必要なため、簡単にデータを改変できてしまう状況も防げる仕組みです。さらに削除やファイルの上書き等でも過去の履歴をすべて保存していてファイルを破壊することができないシステムもあります。
クラウドストレージ上に保存されているすべてのファイルに対して、誰でも簡単にアクセス・編集などができる状態では、セキュリティ上安全とは言い難いでしょう。
そのためファイルにはアクセス制限をかけ、簡単に誰でも閲覧・編集できない状態を作ることが大切です。
4. 接続元IP制限
オフィスのインターネット接続はインタネットプロバイダから回線を借りますが、そこで固定IPオプションを契約すると、オフィスのIPが固定化されます。その固定IPをクラウドストレージサービス側に設定しておくと、オフィスの外からアクセスできなくなります。
拠点が複数あり各拠点からクラウドストレージにアクセスする場合は、すべての拠点で固定IPを取得し、クラウドストレージサービス側に設定しておくことで、社外からのアクセスを遮断できます。これにより悪意ある侵入者からの侵入を防ぐことができます。
5. 監査ログ
情報漏えい事故が起きたときに、誰のID、パスワードが漏洩したのか、または、退職直前の社員が大量にファイルをダウンロードしている証拠など、事後ではありますが調査できる機能が監査ログ機能です。これにより賠償請求や刑事訴訟、再発防止策の検討等に利用することができます。また、社員に監査ログがあることを伝えておくことで内部不正の抑止にもなります。
セキュリティ水準の高いクラウドストレージの注意点
クラウドストレージは高いセキュリティ水準を持つものが多く見られるため、安全に運用できますが、セキュリティ性に優れたクラウドストレージを運用する際は以下の点に注意が必要です。
- 料金が高い
- 多機能すぎて持て余す
セキュリティ水準に優れたクラウドストレージを活用できるに越したことはありませんが、自社に合っているかどうかは、ケースバイケースです。
注意点をよく理解したうえで、導入するかどうかを検討しましょう。
関連記事:法人向けクラウドストレージの選び方とは?導入時の注意点
1. 料金が高い
セキュリティ水準の高いクラウドストレージは、料金が高い傾向にあります。
そのためランニングコストで圧迫されてしまうことが多く、予算管理に注意が必要です。
セキュリティ機能が充実していれば、その分メンテナンスコストがかさむため、クラウドストレージの利用料も上がってしまうということです。
さらにクラウドストレージは、使用容量やユーザー数などで料金が加算される仕組みです。
そのためセキュリティ水準の高いクラウドストレージを多くの人数で使用し、さらに大容量のファイルを保存すれば、毎月のサブスク料金は非常に大きくなるでしょう。
高額な費用をかけられないときは、容量を削減したり契約ユーザー数を抑えたりするなどの対策が必要です。
また、クラウドストレージの利用料金はサービスプロバイダーによって異なるため、セキュリティを重視しつつほかサービスを検討することも大事です。セキュリティが高く、価格も安いクラウドストレージも出てきています。
2. 多機能すぎて持て余す
セキュリティ水準に優れたクラウドストレージは、多機能すぎて持て余してしまう場合もあります。
たとえばたまに使用する程度の小規模事業者などは、クラウドストレージの安全性自体は重要であるものの、そこまでの機能性は求めていないということもあるでしょう。
するとコストなどとのつり合いが取れず、多機能すぎることが使いにくさにつながることも考えられます。
「セキュリティ水準が高いのは結構だけど、全然使わない機能が多い」となったときは、最低限のセキュリティ機能が担保された別サービスを検討したほうが良いといえます。
自社に合った使い方ができるかどうかを考え、導入すべきかを判断しましょう。
セキュリティを高めてクラウドストレージを運用するポイント

セキュリティを高めてクラウドストレージを運用していく際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 最初からセキュリティ性に優れたクラウドストレージを導入する
- 社内でセキュリティに関するルールを定め、徹底する
クラウドストレージは、クラウドの性質をよく理解したうえで導入・運用する必要があります。
それぞれの重要なポイントをチェックしていきましょう。
1. 最初からセキュリティ性に優れたクラウドストレージを導入する
クラウドストレージのセキュリティをより強化する際は、やはりセキュリティ水準の高いサービスを契約することが一番です。
そして最近はセキュリティレベルが高く、価格も安いものがでてきています。
2. 社内でセキュリティに関するルールを定め、徹底する
クラウドストレージを運用する際は、会社全体で運用ルールを明確にし、決めたルールを徹底していくことが重要です。
どれだけ高水準なセキュリティ機能を持つクラウドストレージを導入しても、危険性のある使い方をすれば、情報漏洩などの事故につながるリスクは伴うためです。
たとえば「社外からのアクセスでも、必ず決められた端末のみを使用する」「パスワードを長さを一定以上の乱数とする」などの取り決めがあれば、セキュリティリスクを抑えた使い方ができるでしょう。
セキュリティ性を高める使い方がわからないときは、クラウドセキュリティ・情報セキュリティに関する研修を実施し、社内全体でリテラシー向上を目指すことも重要といえます。
まとめ
クラウドストレージはセキュリティ水準の高いものが多くみられますが、クラウドという特性により、一定の情報漏洩リスクが伴うことは事実です。
そのためセキュリティ機能は調べたほうがよいでしょう。特に端末認証などの多要素認証、接続元IP制限、アクセス管理機能、監査ログなどの機能の有無を確認しましょう。
クラウドストレージのセキュリティについて正しく理解を深め、安全な使い方を実践しましょう。