
電子帳簿保存法における保存期間は、事業者のタイプなどによって変わる仕組みです。
法人の場合は原則として7年間の保存期間が求められますが、例外もあるため、詳細については事前の確認も必要となります。
そこで今回は、電子帳簿保存法で求められる各種書類データの保存期間について解説していきます。
保存期間が過ぎたあとの破棄のポイント、削除するときの注意点などもまとめているため、電子帳簿保存法における保存期間の考え方について困っているときは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
電子帳簿保存法とは?概要を解説
はじめに事前知識として、電子帳簿保存法の概要を整理しておきましょう。
電子帳簿保存法は、国税や取引に関係する各種書類の電子保存について、さまざまな取り決めをまとめた法律になります。
具体的には、以下のような内容が定められています。
- 電子保存できる書類の種類
- 電子保存の具体的な方法
- 電子保存における要件
- 保存すべき期間
- その他注意・禁止次項 など
もともと電子帳簿保存法は1988年に施行された法律ですが、これまでには複数回の法改正があり、特に最近では2022年の法改正を機に注目を集めているのが特徴です。
施行当時こそ電子保存はあまりメジャーではありませんでしたが、昨今はIT活用がさかんな時代で、さまざまなビジネス書類をデジタルで作成・発行しています。
そういった時代の流れもあるため、時代に適した業務の進め方を模索するなら、電子帳簿保存法についてはしっかりと理解を深めておきたいところです。
電子帳簿保存法で定められている各種書類の保存期間
電子帳簿保存法に基づいて決算関係書類や契約書、請求書などを電子保存する場合、具体的にいつまで保管しておけば良いのか、保存期間が気になるところです。
万が一指定の保存期間よりも早く保存データを削除してしまったときは、電子帳簿保存法違反に該当する恐れがあるため、十分に注意が必要です。
そのためここからは、電子帳簿保存法に基づいて書類を電子保存するときの保存期間を、以下の項目に分けて解説していきます。
- 法人の場合
- 個人事業主(青色申告)の場合
- 個人事業主(白色申告)の場合
保存期間は法人・個人事業主でそれぞれ異なるため、請求書や契約書などを電子化する際は注意しましょう。
では、それぞれの保存期間について詳細を見ていきます。
1. 法人の場合
まず、法人が電子帳簿保存法に則って書類を電子保存する場合、保存期間は一部の例外を除いて7年と定められています。
そのため請求書や納品書などを取引先から受領した際は、電子化にあたって保存方法・保存要件に注意しつつ、最低でも7年間は保存する必要があります。
なお、電子帳簿保存法では書類の種類や作成・発行形式にあわせて複数の保存方法がありますが、いずれも保存期間は7年の決まりです。
ただし最初にも触れたとおり例外もあり、例外のケースに当てはまる法人は、最大で10年の電子保存が求められるため注意しましょう。
例外とは、欠損金の繰越控除を受けるケースが該当します。
「欠損金の繰越控除」は、赤字になった金額を次の事業年度に繰り越すことによって、節税が可能になる税務上の控除の仕組みです。
欠損金の繰越控除が可能なのはもともと9年間でしたが、税制改正によって繰越控除は10年間まで可能になりました。
これを受けて電子帳簿保存法の保存期間も、最長10年に変わりました。
2. 個人事業主(青色申告)の場合
個人事業主は、青色申告なのか白色申告なのかで、電子帳簿保存法の保存期間が変わる仕組みです。
まず、青色申告の場合は書類ごとに、以下のように保存期間が設定されています。
- 帳簿関係書類:7年間
- 決算関係書類:7年間
- 現金預金取引等関係書類:7年間
- 取引に関する書類:5年
取引に関する書類は、原則として取引先とやり取りした契約書・請求書・見積書などが挙げられます。
それ以外の書類を電子保存する場合は、青色申告をしている人は、原則として7年間の保存が必要だと認識しておきましょう。
ただし、売上高が1,000万円を超える人やインボイス発行事業者の人は課税事業者に当てはまるため、個人事業主の場合でも領収書などは7年間の電子保存が必須となります。
このため保存期間が適切に判断できないときは、個人事業主の場合は仕事関係の書類は7年間保存する、と認識しておくと良いかもしれません。
3. 個人事業主(白色申告)の場合
個人事業主で白色申告を行っている人は、書類の種類ごとに、以下の保存期間が電子帳簿保存法にて定められています。
- 法定帳簿:7年間
- 法定帳簿以外の任意帳簿:5年間
- 決算関係書類:5年間
- 業務関係書類:5年間
ただし、白色申告の人も課税事業者に該当する場合は、領収書などを7年間保存する必要が出てきます。
保存期間は正しくは5年~7年ですが、わからないときは、無難にすべて7年間保存しておくと安心できるでしょう。
電子帳簿保存法に則して電子保存した書類のその後は?

電子帳簿保存に対応して電子保存した各種書類は、最大で10年の保存期間が必要ですが、保存期間が過ぎたあとはどのように扱えば良いのか気になるところです。
ここからは、電子保存の保存期間が終了したあとの書類の扱いについて解説していきます。
「保存期間終了後はすぐ破棄して良いの?」と困っているときは、以下のポイントをチェックしておきましょう。
保存期間終了後は破棄しても問題ない
保存期間が終了した電子保存データは、基本的に破棄して問題ありません。
適切な保存期間を守って保存してきたのであれば、削除することで税務上問題になることはないといえます。
しかし保存期間はあくまで電子帳簿保存法上の決まりのため、逆に保存期間を超えて長期的に保存することも、問題はありません。
決算関係書類や、長期的な仕事のやり取りをしている取引先との契約書・請求書などは、会社にとって重要書類にあたるのは間違いないでしょう。
むしろ保存期間を気にせず、可能な限り保管しておいたほうが安心といえるのは確かです。
とはいえすべての書類を長期的に保管するとなると、電子保存でも管理コストがかかる原因にもなります。
そのため電子保存した書類を適切に管理する際は、電子帳簿保存法における保存期間を念頭に置いたうえで、書類ごとに社内における保存期間ルールを設けることが大切です。
スキャナ保存した際の原本の取扱いについて
電子帳簿保存法では、紙ベースで受領した契約書や請求書などの取引関係書類について、スキャナ保存によって電子化することが認められています。
スキャナ保存できれば、紙をファイリングして保管する必要がなくなるため、省スペース化・コスト削減などの効果に期待できます。
しかしスキャナ保存の際に気になるのは、PCに取り込んだあとに残る紙の原本の取扱いです。
結論からいうと現在は、スキャナ保存完了後は、原本はすぐ破棄しても問題ないとされています。
なお、紙で受け取った書類のため、破棄する際はシュレッダーにかけることが望ましいでしょう。
以前の電子帳簿保存法では、年1回以上の定期検査が義務付けられていたため、紙の原本も1年以内を目安として保管が必要となっていました。
しかし2022年に電子帳簿保存法は改正され、定期検査は廃止されたため、現在は原本もすぐ破棄して問題ないとされています。
電子データの適切な削除方法
電子帳簿保存法に対応して電子保存した各種書類の電子データは、保存期間終了後、容量削減のために削除してもよいでしょう。
電子データの削除方法は、主に次の方法が挙げられます。
- PC内のゴミ箱に入れたうえでゴミ箱を空にする
- データ削除のアプリケーションを利用する
- 電子帳簿保存法対応の電子化サービスの機能で削除する
ただし、「ゴミ箱に入れる→ゴミ箱を空にする」の方法で削除するのは、あまりおすすめできません。
ゴミ箱を空にすれば、一見すると完全に削除されたように思えますが、ハードディスク内にはしばらくデータが残っています。
そのため情報流出を防ぐうえで、より適切な削除方法は、アプリケーション・ツールを使った削除といえるでしょう。
電子帳簿保存法の保存期間終了後に削除する際の注意点
電子帳簿保存法における保存期間終了後に電子保存データを破棄する際は、以下の点に注意しましょう。
- 本当に保存期間が終了しているかよく確認する
- 期間終了後も保管が必要な書類でないか確認する
- 誤って別の電子保存データを削除しないように注意する
データは一度削除してしまうと、復旧が難しいことも少なくありません。
上記の注意点をチェックし、慎重に削除作業を済ませましょう。
1. 本当に保存期間が終了しているかよく確認する
電子帳簿保存法における保存期間は事業者のタイプによって5年から最大で10年ですが、期間が終了したあとは、本当に保存期間が終了しているか入念に確認しましょう。
保存期間が終わっていないにも関わらず、電子保存したデータを消してしまうと、電子帳簿保存法違反となります。
違反が発覚した場合、以下の罰則が適用される恐れがあるため注意が必要です。
- 青色申告の承認が取り消される
- 追徴課税の対象になる
- 会社法違反に該当するため、100万円以下の罰金が科せられる
電子帳簿保存法について理解を深める際は、上記のペナルティについてもチェックしておきましょう。
なお、保存期間を把握する際は、起算日の考え方についても注意が必要です。
起算日については、以下のようになります。
- 法人:当該事業年度の確定申告期限の翌日
- 個人事業主:確定申告期限の翌日
書類を受領した日・発行した日を起算日にするわけではないため、注意しましょう。
2. 期間終了後も保管が必要な書類でないか確認する
電子帳簿保存法の保存期間は5年~10年ですが、決算関係の書類をはじめとした重要書類は、可能な限り保管しておくと安心できるでしょう。
そのため保存期間終了後は、削除する前に、その後も保管が必要な書類でないかよくチェックしたいところです。
保存期間後も長期的にデータを保存しておけば、以下のようなメリットがあります。
- トラブルが起きたときに過去の情報をさかのぼって確認できる
- 何らかのデータを取りたいときに古いデータも参考にできる
現代はビジネスにおけるさまざまなデータ活用が欠かせない時代のため、必要に応じて、長期的な保管も検討しましょう。
3. 誤って別の電子保存データを削除しないように注意する
保存期間が過ぎた電子保存データを破棄するときは、誤って別のデータを消さないように、十分に注意してください。
もし誤って削除してしまった電子保存データが、まだ保存期間内だった場合、同様に電子帳簿保存法違反となる恐れがあります。
電子帳簿保存システムの中には、誤ってデータを削除してしまっても復元ができる機能や、データの完全な削除は権限を持ったユーザー以外できないようにする機能があるシステムもあります。
削除作業にはさまざまなリスクが伴うため、ミスを防ぐための対策・ルールづくり・システムの選定は重要といえます。
電子帳簿保存法の保存期間についてよくある質問

最後に、電子帳簿保存法における保存期間についてのよくある質問をまとめていきます。
よくある質問は、次のとおりです。
- どうすれば保存期間をスムーズに把握できる?
- 電子化のメリットとは?
では、それぞれの回答をまとめていきます。
1. どうすれば保存期間をスムーズに把握できる?
電子帳簿保存法における保存期間をスムーズに把握・管理したいときは、電子帳簿保存法対応のシステムを導入すると良いでしょう。
そもそも電子帳簿保存法に対応してさまざまな書類の電子化を始める際は、システムの導入はほぼ必須といえます。
システムを活用すれば、スムーズに保存要件を満たすかたちで電子保存ができ、保存期間の把握・管理も適切にできます。
2. 電子化のメリットとは?
電子帳簿保存法に則って書類の電子化を進めれば、以下のようなメリットがあります。
- 紙や印刷代などのコストを削減できる
- 書類管理の業務効率化につながる
- 書類の保管スペースが不要になる
- 災害で被災したときも重要書類が被害を受けにくい
電子保存には多くのメリットがあるため、電子化すべきか迷ったときは、上記のメリットをもとに検討を進めてみましょう。
まとめ
電子帳簿保存法では、電子保存した書類データの保存期間は法人の場合原則7年、最長10年となります。
個人事業主は5年または7年の保存が必要となり、書類の種類や確定申告の形式などによって保存期間が変わるため、事前の確認は不可欠です。
ただし保存期間はあくまで税務上・法律上の決まりのため、重要書類を長期的に持つことでさまざまなリスクに備えたいときは、保存期間終了後も保管を続けるかたちで問題ありません。
起算日の考え方やその後の削除方法などもチェックしたうえで、電子帳簿保存法に則し、適切に重要書類を管理しましょう。