
クラウドストレージでは暗号化が可能なため、重要なデータを保存する際は、暗号化機能を積極的に活用したいところです。
また、クラウドで暗号化できない場合は、あらかじめソフトを使用して暗号化を施すことも重要といえます。
しかし、セキュリティやクラウドについてなじみがない人は、「そもそも暗号化とは?」などの疑問に直面することも珍しくありません。
そこで今回は、クラウドストレージにおける暗号化について解説したうえで、暗号化の必要性やメリットについても触れていきます。
暗号化について理解を深め、強固なセキュリティ体制を築いたうえで、安全にクラウドストレージを活用しましょう。
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目次
クラウドストレージの「暗号化」とは
クラウドストレージを利用する際は、データの流出・漏洩に十分に注意する必要があります。
オンライン上でファイルを保管したり編集したりするため、クラウドストレージには外部から不正アクセスを受けるリスクが伴います。
そこでセキュリティ性を高められる機能の一つに、暗号化があります。
暗号化ではクラウドストレージ上のデータを暗号化することが可能で、万が一第三者にデータを見られることがあっても、暗号を解読できなければ中身を完全に閲覧されてしまうことはなくなります。
暗号化の機能を活用すれば、ファイルを不正にダウンロード・転送されることがあっても、暗号化された状態では中身がどのようなファイルなのかわかりません。
そのため単純な不正アクセスやデータ改ざんだけでなく、持ち出し・盗難のリスクにも備えられることが特徴です。
サイバー攻撃や内部からの情報流出が問題化している昨今、クラウドストレージに限らず自社サーバーやメディア保存でもさまざまな脅威が潜むため、暗号化などの優れたセキュリティ機能を持つサービスを活用することは非常に重要といえます。
クラウドストレージでできる暗号化の種類
まずは、クラウドストレージにおける暗号化について理解を深めるためのポイントとして、暗号化の具体的な種類をチェックしていきましょう。
クラウドストレージにおいて暗号化の機能を活用したい場合、できる暗号化の種類は以下の2つがあります。
- ファイルの暗号化
- 通信の暗号化
「何を」暗号化するかによって、どのような脅威に備えられるのかは変わってきます。
クラウドストレージの用途や具体的な活用方法などを考慮し、どのような暗号化が自社にとって有効なのかを整理していきましょう。
1. ファイルの暗号化
クラウドストレージでは、保存しているファイル自体を暗号化することが可能になります。
ファイルの暗号化では、暗号化の鍵を用意することで可能になり、鍵を所有する人しか中身のデータは確認できなくなる仕組みです。
暗号化は単純なアクセス制限をかけることではなく、データ自体を暗号化することが大きな特徴です。
そのため暗号化が解けなければ、ファイルを開いたとしても具体的な内容は、ユーザーにはわかりません。
高水準のクラウドストレージには暗号化機能がデフォルトで搭載されており、第三者からのサイバー攻撃・悪意あるデータの持ち出しなどに備えられます。
2. 通信の暗号化
クラウドストレージを利用する際は、通信の暗号化も可能です。
通信経路に暗号化をかけることで、データ共有・転送の際にサイバー攻撃を受けても、データの盗み見ができないようにする仕組みです。
通信の暗号化機能の水準が高いクラウドストレージは、大容量のファイルの転送する際に、データを複数のブロックに分けることで暗号化を施し、簡単に盗み見ができないようにセキュリティ性を高めています。
通信の傍受はオンライン環境において頻繁に起こるサイバー攻撃のため、通信を滞りなく行うクラウドストレージでは、暗号化の措置が欠かせないでしょう。
クラウドストレージを暗号化する方法

クラウドストレージの暗号化の手法には、以下の2つのパターンがあります。
- 暗号化ソフトを取り入れる
- 暗号化機能のあるクラウドストレージを利用する
暗号化の具体的なやり方には複数の手法があるため、暗号化を施して大事なデータを脅威から守るには、手法を整理しておきましょう。
それぞれの方法の特徴について解説していきます。
1. 暗号化ソフトを取り入れる
よくある暗号化の方法の一つに、暗号化ソフトがあります。
暗号化ソフトを取り入れて活用すればさまざまなストレージの暗号化が実現するため、複数のストレージを利用している場合は、暗号化ソフトの導入も積極的に検討したいところです。
代表的な暗号化ソフトは、以下があります。
- Cryptomator
- パスワード付きzipファイル作成ツール
これらの暗号化ソフトを活用すれば、クラウドストレージに保存したデータの暗号化が可能になります。
もちろん、上記のほかにも暗号化が可能なソリューションは多くのベンダーから販売されているため、導入の際は自社に合ったものを選びましょう。
暗号化ソフトを使えば、暗号化機能のないクラウドストレージにファイルを保存する際も、ソフトでの暗号化によってセキュリティ体制を強化できます。
2. 暗号化機能のあるクラウドストレージを利用する
クラウドストレージをより頻繁に活用する場合は、そもそも暗号化の機能が標準的に搭載されているクラウドストレージを選びましょう。
暗号化機能が入っているクラウドストレージを活用すれば、別途ソフトを用意することなく、クラウドの機能で暗号化を施せます。
標準的に暗号化機能が入っていれば、ファイルを保存した段階で暗号化が行われるため、クラウド保管と暗号化の手間をまとめて行ってくれるのがメリットです。
特に重大な情報を多くクラウドストレージに保管する際は、暗号化によるセキュリティ対策が欠かせません。
しかしそんな中でソフトを活用して逐一暗号化を施すのでは、非効率的なため、標準で暗号化機能が搭載されたクラウドストレージに保管することが望ましいでしょう。
クラウドストレージの暗号化の必要性・メリット
クラウドストレージで暗号化を実施すれば、さまざまなメリットが生まれます。
「暗号化は大事と聞くけれど、本当にそこまでする必要はあるのか」と必要性に悩んだ場合は、クラウドストレージの暗号化の必要性やメリットを整理しておくと良いでしょう。
クラウドストレージにおいて暗号化が必要となるポイント・暗号化のメリットは、下記のことが挙げられます。
- 機密情報を守ることで損失を防ぐ
- 信頼性やイメージダウンを回避する
1. 機密情報を守ることで損失を防ぐ
暗号化によってクラウドストレージ内のデータを保護すれば、万が一外部から不正アクセスなどのサイバー攻撃を受けても、データをすぐに確認できないように備えられます。
重大な機密情報がすぐ見られてしまう状態では、情報漏洩・流出によって、企業には大きな損害が出る恐れがあります。
流出の規模が大きければ、深刻な損失になることは間違いないため、暗号化などのセキュリティ対策を施すことは重要といえます。
2. 信頼性やイメージダウンを回避する
暗号化でクラウドストレージのデータ・通信を守れば、情報漏洩やデータ改ざんなどの情報事故も起こりにくくなるため、企業としての信頼性やイメージダウンを守るきっかけになるでしょう。
もし重大な情報事故を起こしてしまえば、顧客から見たときの自社のイメージ・信頼性は大きく落ち込みます。
イメージ回復には長い時間がかかり、取引先との契約打ち切りなどの損失も出るでしょう。
暗号化によってデータの保護を強化しておけば、そういったリスクにも備えられます。
クラウドストレージにおける暗号化の注意点

暗号化を実践し、大事なデータをクラウド上で流出させないことは、重要なセキュリティ対策といえるでしょう。
しかしながら、クラウドストレージにおける暗号化には、以下のような注意点もあるためあらかじめチェックしておくことが重要となります。
- 暗号化によって動作が重くなることがある
- 鍵の紛失にくれぐれも注意する
- 暗号化がすべての脅威を防げるわけではない
暗号化を施せばすべてのリスクに対して備えを万全にできるわけではなく、逆に暗号化がさまざまな業務の妨げになってしまうケースもあります。
具体的にどのような点に注意すべきなのか、詳細を見ていきましょう。
1. 暗号化によって動作が重くなることがある
暗号化の際は、動作が重くなるケースにまず注意が必要です。
特に専用ソフトを使用して暗号化・解除を行うときは、実際に操作するときに動作が重くなる場合があります。
暗号化を施すということは、ファイルに暗号化という別の情報が加わるため、処理速度遅延につながります。
もともと大きいファイルは、暗号化・復号(解除)が完了するまでに長い時間がかかるケースもあり、時間のかかる計算に耐えうるデバイスがそもそも必要になる場合もあります。
結果、別業務に支障が出てしまうことも考えられるでしょう。
ほかには、まとめて複数の暗号化を行うときも動作が遅くなりやすいため、あらかじめ注意が必要です。
なお、動作が遅くなることの対処法は、よりハイスペックの端末で暗号化作業を進めることや暗号化が標準搭載されたクラウドストレージを取り入れることです。
ハイスペックPCであれば、別業務を進めながらもスピーディーに暗号化処理ができる可能性があります。
また、クラウドストレージ自体に暗号化機能がついていればPCでの暗号化は不要になります。クラウドストレージ上に暗号化機能がついていることで、高速化をはかっているので、動作速度の心配は不要でしょう。暗号化の有無をチェックしたうえでクラウドストレージを選ぶことも考えましょう。
2. 鍵の紛失にくれぐれも注意する
クラウドストレージを暗号化する場合は、暗号を解除するための鍵の管理を徹底する必要がある場合があります。
万が一鍵の場所がわからなくなったり、複数ある鍵の中でどれが正しいのか判別できなくなったりすると、暗号化は解除できなくなるためです。
ほかには、ミスによって鍵を削除してしまうケースにもくれぐれも注意しましょう。
クラウドストレージの暗号化ではサービス内で自動的に鍵を管理してくれてユーザーは鍵の管理が不要なものも多くあります。鍵の紛失リスクを考えるとクラウドサービス側で鍵の管理を自動的に行なってくれるサービスの方が安心です。
暗号化ソフトには、万が一の紛失や破損に備えた機能があることも多いですが、紛失すればファイルの消失と同じダメージとなりますのでリスクが高いと言えます。
鍵は暗号化を実施する際に欠かせないもののため、丁寧な管理が必須となります。
3. 暗号化がすべての脅威を防げるわけではない
クラウドストレージで暗号化機能を活用すれば、確かに多くのセキュリティリスクに備えられますが、すべての脅威に対処できるわけではないのも事実です。
暗号化を厳重に施しても、完全にセキュリティリスクがなくなったとはいえないため、「暗号化してあるから大丈夫」と安心しきらないことが重要となります。
すべての脅威を防げるわけではない理由は、以下のとおりです。
- 暗号化解除の技術を持つハッカーに狙われる可能性もゼロではない
- 遠隔操作によって暗号鍵の取得・暗号化解除の被害を受ける可能性もある
- サイバー攻撃の内容やトレンドは日々変化している
暗号化を施せば、基本的には鍵で解除しない限り、ファイルの中身はわかりません。
しかし鍵の強度が低い場合は、鍵がなくても強制的に暗号を解除できる技術を持つハッカーも存在するため、そういった被害を受ける可能性もゼロではないでしょう。
ウイルス感染→遠隔操作などの動作が起これば、遠隔で鍵を奪われることで解除が起こってしまうケースも考えられます。
さらにいうとサイバー攻撃の種類や手法、その他トレンドは日々変化しているため、「暗号化すると安全」というセキュリティの考え方を根底から覆すような脆弱性が新たにわかれば、備えられない可能性もあります。
そのためクラウドストレージのセキュリティを高める際は、暗号化も含めてさまざまなセキュリティ機能を活用し、複数の面からセキュリティを強化していくことが望ましいです。
まとめ
暗号化は、クラウドストレージの危険性からデータを守るうえで重要な機能です。
実際にクラウドストレージも、暗号化の機能が標準で取り入れられていることが多いですが、重大な情報を守りたいときは暗号化機能だけではなく、その他IPアドレス制限や端末認証機能等が搭載されていることを確認して活用しましょう。
また、暗号化の必要性がわからないときは、具体的にどのようなメリットが望めるのか理解することが大切です。
暗号化によって業務が遅れてしまっては本末転倒のため、必要に応じて、暗号化における注意点なども整理しておきたいところです。
クラウドストレージの暗号化について理解を深め、さまざまなある脅威に対して備えを万全にしましょう。