
電子帳簿保存法に基づいて電子保存を始める際は、何から始めるのが良いのか、はじめは困ってしまうことも多いでしょう。
その際は、電子帳簿保存法の概要から理解したうえで、電子化導入の手順を明確にしていくことが大事です。
そこで今回は、電子帳簿保存法に則って書類電子化を進めるときの流れ・手順を解説していきます。
あわせて電子化のメリット・デメリットなども見ていくため、電子保存を検討する際は、ぜひ参考にしてください。
目次
電子帳簿保存法とは?何から始める?
電子帳簿保存法に則って書類の電子化を取り入れる際は、何から始めるべきなのかわからず、困ってしまうものです。
その際は「そもそも電子帳簿保存法とは何?」という基礎的な部分から把握できておらず、混乱を極めることも少なくありません。
したがって電子化を推進する際は、基礎知識として電子帳簿保存法の概要を理解しておきましょう。
「電子帳簿保存法」とは、国税に関する帳簿類を電子化・電子保存することを許可し、保存する際のルール・要件などをまとめた法律です。
もともと施行は1998年のため20年以上も前にできた法律ですが、近年DX推進やIT活用がさかんな流れもあり書類のデジタル保存を始める企業が増加傾向にあることから、現在注目を集めています。
電子帳簿保存法において電子保存が認められているのは、仕訳表や現金出納帳、売上帳などの国税関係帳簿、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、領収書や請求書などの取引関係書類です。
そしてこれらの書類を電子化する場合は、下記3つの方法で保管しなければなりません。
- 電子帳簿等保存(電子計算機器を活用することで帳簿類を作成しデジタル保存する)
- スキャナ保存(取引関係書類をスキャナーで取り込み、データを保存する)
- 電子取引データ保存(EDI取引・電子契約・メールなど、電子取引関係情報をデータにして保存する)
電子帳簿保存法に則って各種書類を保存すれば、保管の手間・コストを大幅に削減できます。
電子帳簿保存法について理解を深めたうえで、書類の電子化を円滑に進めていきましょう。
電子帳簿保存法の電子保存は何から始めるべき?

まずは、電子化を始める流れをわかりやすく解説していきます。
電子帳簿保存法に則って書類の電子化を進める際は、以下の手順を意識しましょう。
- 電子保存の目的を明らかにする
- 電子保存に移行する書類を明確にする
- 電子保存に伴って業務フローを見直す
- 電子保存を効率化できるシステムを選ぶ
- システムを試しつつ自社に導入する
上記6つのステップを意識して電子移行手続きを始めれば、「電子帳簿保存法の電子保存に対応したいが、何から始めるべきなのかわからない」というときでも、トラブルなく各種手続きを進められるでしょう。
では、ステップごとに重要なポイントを解説していきます。
1. 電子保存の目的を明らかにする
はじめに、電子保存を始める目的を明確なものにしましょう。
「なぜ電子化する必要があるのか」という目的や必要性が不明確な状態では、電子化にあたってのニーズを満たせない可能性があるためです。
たとえば、「情報のセキュリティを強化したい」という悩みがあるのであれば、適切なアクセス制御や暗号化機能のあるシステムを導入することが必要です。
目的を設定すればそのあとの行動指針が見えてくるため、「何から始めるべき?」と困ったときは、電子化の目的を明らかにしましょう。
2. 電子保存に移行する書類を明確にする
電子帳簿保存法に則って書類の電子化を進める際は、具体的にどんな書類を電子化するのかを明確にしましょう。
電子化する書類を事前に洗い出しておけば、「その書類を電子化するには何をすれば良いか」を円滑に考えていけます。
デジタル保存に移行する書類は、「何の業務を効率化させたいか」「何が課題になっているか」などをもとに決めていくと良いでしょう。
たとえば請求書や領収書などの取引業務の効率化を目指す場合は、請求書・領収書・契約書など取引関係書類の電子保存・デジタル移行を検討し、さらにそれらの移行先が電子帳簿保存要件に対応しているかなども検討の軸にするべきです。
3. 電子保存に伴って業務フローを見直す
何の種類を電子保存にするか決めたあとは、当該書類の取り扱いが含まれる業務フローの見直しが必要です。
従来のやり方では紙のやり取りだったフローが、電子に変わるため、業務フローを見直す必要があります。
そもそもシステムを取り入れなければ電子化できない部分もあるため、システムの取り扱いのフローが必要になるのも明らかです。
なお、せっかくペーパーレス化によって作業効率を高めたにも関わらず、結果として効率が悪く混乱を招くフローでは意味がありません。
必要に応じてコンサルなどにも相談しながら、効率アップに期待できる業務フローを作りましょう。
4. 電子保存を効率化できるシステムを選ぶ
電子保存を始める際は、基本的にスムーズに書類を電子化し保管できるシステムが必要です。
そのため業務フローが固まったら、効率的に電子保存業務を進められるシステムを選びましょう。
システムを選ぶときは、主に以下のポイントを意識することが望ましいです。
- 電子帳簿保存法の要件に対応できるシステムか
- 既存の自社システムと相性は良いか(連携できるか)
- セキュリティ性に優れているか
- 使いこなしやすい操作性か
特に重要なのは、電子帳簿保存法の要件に対応しているシステムかという点です。
電子帳簿保存法に即して書類を電子化する場合は、要件を満たすかたちで保存しなければなりません。
書類を電子保存できるシステムはさまざまあるため、スムーズに、かつ適切に保存できるシステムかよく見極めたうえで厳選しましょう。
5. システムを試しつつ自社に導入する
取り入れたいシステムが決まったら、導入手続きを進めていきます。
システムによってはお試しで利用できるものもあるため、操作性や機能を確かめたいときは、一度トライアルを活用することもおすすめです。
導入にはさまざまな手続きが必要ですが、特にクラウドストレージ型のシステムは自社サーバーの構築などが不要なため、すぐに導入できることがメリットです。
システムの担当者ともよく相談しながら、自社にぴったり合うシステムを取り入れ、運用を始めましょう。
電子帳簿保存法に則って電子保存を取り入れるメリット

電子帳簿保存法に則って書類の電子保存を始める際は、そもそも保存のメリットは何かという点も理解しておく必要があるでしょう。
主なメリットは、以下の6つが挙げられます。
- 検索性を確保することで作業効率が高まる
- 社内で情報共有するときのコストが下がる
- 書類の保管場所の省スペース化が実現する
- ペーパーレス化によるコスト削減
- セキュリティ水準を高められる
- BCP対策になる(事業継続)
効率的かつ安全に業務を進めるうえで、上記のメリットはいずれも重要です。
では、詳細を解説していきます。
1. 検索性を確保することで作業効率が高まる
電子帳簿保存法に即して書類を電子保存する際は、検索要件を満たすことで検索性を確保する必要があります。
検索性が確保されれば一つひとつの書類データは探しやすくなり、作業効率が向上するでしょう。
今までファイリングされた書類を手作業で探さなければならなかったのが、電子保存の検索性によって、瞬時に探せるようになる仕組みです。
多くの書類を扱う部門では、書類が探しやすくなることは業務効率化の面で大きなメリットです。
2. 社内で情報共有するときのコストが下がる
例えば過去にお客様に提示した見積書、提案書があり、似た案件の見込み客が来たときに、以前の見積書や提案書を担当者に情報共有したいとき、Webブラウザベースのクラウドストレージであれば、URLを担当者に渡すだけで情報共有ができます。
紙の書類であればこのような共有はとても手間です。また営業所等の拠点が離れているとさらに手間になります。
書類が電子化されていてクラウドストレージに保存されていることで効率よく社内の情報資産を共有できます。
3. 書類の保管場所の省スペース化が実現する
電子帳簿保存法に対応するかたちで書類を電子化すれば、書類の保管場所の省スペース化が実現します。
一枚一枚の書類がデータとして保存されるため、紙で保存するよりも、ファイルをしまう棚などを用意する必要がなくなります。
そのため今までは用意が必要だった倉庫スペースが不要になり、空きスペースを有効活用できる可能性があります。
また、スペースに余裕が生まれることで、そこまで広いオフィスを借りなくても良くなる場合もあります。
4. ペーパーレス化によるコスト削減
書類の電子保存は、ペーパーレス化によるコスト削減という大きなメリットをもたらします。
削減できるコストは、たとえば以下が挙げられます。
- 紙代
- インク代
- 印刷機器代
- 封筒代
- ファイル代
- ハンコ代
電子保存によって上記すべてのコストが不要になれば、大幅な経費削減が実現するでしょう。
5. セキュリティ水準を高められる
電子帳簿保存法に則って電子化を実施すれば、セキュリティ水準を高められるため、情報漏洩のリスクに備えられます。
まず、書類をデータにしてしまえば、紙で保管されていた書類を外部に持ち出される心配がありません。
紛失や物率的な破損(やぶれる・水濡れ・インクの色褪せなど)も防げるでしょう。
電子保存の場合は、パスワードやアクセス制限などのセキュリティによって保護されるため、紙ベースと比べると持ち出しのハードルは上がります。
また、万が一情報漏洩があった際はシステムによってアクセスログをたどることができるため、関係者の特定もスムーズです。
6. BCP対策になる
書類の電子化は、BCP対策としても有効といえます。
BCP対策とは、自然災害や火災保険に備え、事業への被害を最小限に抑えるリスクマネジメントの一つです。
ペーパーレス化によって書類をデータにしておけば、今後地震や津波などで被災した際も、書類への被害を最小限に抑えられるでしょう。
書類はデータとしてクラウド上に保管されているため、物理的に書類が破損することはなく、災害時も事業の継続性を守るポイントになります。
電子帳簿保存法に則って電子保存を取り入れるデメリット

次に、電子保存を取り入れるデメリットもあわせて見ておきましょう。
主なデメリットは、以下の2つがあります。
- 要件への適合の労力がかかる
- 業務フローを変える必要がある
では、重要なポイントを一つひとつチェックしていきましょう。
1. 要件への適合の労力がかかる
電子帳簿保存法に対応するかたちで書類の電子化を進める場合、まず、電子保存の要件を把握する必要があります。そして、これらの要件に適合するためには、追加の労力やコストが必要になる場合があります。
電子帳簿保存法には「この方法で保存しなければならない」といった要件が細かく設定されており、2022年には一部緩和の法改正が実施されたものの、一つひとつを把握することは簡単ではありません。
そのため「要件がわからないので何から始めるべきなのか見えてこない」と困っているときは、クラウドストレージサービスの担当者などに相談することが大事です。
2. 業務フローを変える必要がある
電子化を取り入れれば、業務フローの見直しはほぼ必須となります。
そのため一時的に現場は混乱する恐れがあります。ただし、前述のように電子化を導入することによって作用効率を高めることができるので、長い目で見れば業務フローを変えることはメリットとなります。
業務フローを見直す際は、事前にマニュアルを準備し、周知します。また運用が始まったあともしばらくは、権限がある人がしばらく正しく運用されているかをチェックし、習慣化するまで指示していくことが重要となります。慣れてしまえば、スピーディに検索でき、情報共有でき、データが消えない安心感があるため、業務を遂行する人にもメリットを感じることができるでしょう。
まとめ
電子帳簿保存法に対応する際は、そもそも電子帳簿保存法とは何か、何から始めるべきなのかを十分に理解しておく必要があります。
とはいえ電子保存の目的を明らかにしないまま始めてしまうと、業務効率化などの効果を十分に実感できない可能性があります。
そのためまずは、「なぜ電子化するのか」を明らかにし、電子帳簿保存法対応の目的を設定しましょう。
そのうえで必要なシステムを取り入れ、スムーズかつ適切に、書類の電子保存を進めることが大切です。