
経理は会社のお金を管理する重要な仕事です。経理の業務は正確かつ迅速に行わないと会社の経営にも悪い影響を与えるため、効率的に進める必要があります。
そして、経理業務の効率化が実現する手段として注目されているのが、経理業務のペーパーレス化です。今回は、経理業務におけるペーパーレス化のメリット・デメリット、ペーパー化の導入を進めるためのポイントなどについて、詳しく解説します。
目次
経理業務のペーパーレス化とは
経理業務におけるペーパーレス化とは、経理業務で発生するさまざまな書類を、すべて電子データとして処理する手段です。経理が担当する業務では、納品書・請求書・領収書など数多くの書類を扱います。これらの種類は取引の正当性を証明するものであり、書類がないと取引をしたという証拠が残せません。
また、書類に金額・名称などの間違いがあった場合、取引先との信頼関係に影響するだけではなく、書類によって提示された取引の正当性が証明できないというリスクがあります。そのため、経理業務における書類作成・発行は細心の注意を払って行わないといけません。
しかし各種書類の処理をすべて手作業で進める場合、注意を払っていてもミスが発生する恐れがあり、また集中力の途切れなどにより効率的に作業が進められないこともあります。そのような経理の欠点を改善するために発案されたのが、手作業のミスを回避するためのペーパーレス化です。
経理業務のペーパーレス化は、電子帳簿保存法の改正という背景もあります。この法律により以前は一部で認められなかった経理書類の電子データ化・ペーパーレス化は、導入しやすくなりました。この法律では「電子取引情報のデータ保存の義務化」が課せられているため、法人・個人に関係なく、経理業務のペーパーレス化はますます推進され定着すると予想されています。
経理業務をペーパーレス化するメリット

経理業務をペーパーレス化するメリットは、下記の4点です。
- コスト削減
- 保管場所が不要になる
- 業務効率化に繋がる
- セキュリティ対策に繋がる
この4つのメリットは具体的にどんな内容なのか、それぞれの特徴を説明しましょう。
1. コスト削減
経理業務のペーパーレス化のメリットの代表格は、コスト削減です。経理に関する必要書類が紙の場合、下記のようなコストがかかります。
- 紙代
- 印刷代
- 書類を郵送する際の封筒代・切手代
- 書類を処理するための人件費
- 不要な紙の廃棄にかかる費用
経理業務のペーパーレス化を実行すれば、上記のコストが一切かからず、大規模なコスト削減が実現可能です。特に電子化では特に書類を探す時間、整理する時間が大幅に短縮できます。費用だけでなく書類に対応するための人件費も削減でき、それまで書類に対応していた時間を他の業務にあてられるので、効率化も実現します。
経営が順調な企業であれば業績も上がりますが、それに比例して従業員および取引先も増加し、それによって生じるのが膨大な経理に関する必要書類です。納品書・請求書・領収書などが毎日発行されるため、人件費をかけて膨大な書類の処理に対応しなくてはいけません。
しかし経理業務のペーパーレス化の導入が実現すれば、人件費を抑えることができ書類を処理するための労力もカットできます。
2. 保管場所が不要になる
経理業務のペーパーレス化は、紙の保管場所も必要なくなるのもメリットに挙げられます。企業の業績が順調であればあるほど、納品書・請求書など経理業務に関する書類も増加します。
書類は基本的に処分しないである程度は保管しなくてはいけません。この際に問題となるのが、書類の保管場所・保管方法です。保管のためのスペースに余裕があり、保管方法も整理整頓された方法を実施している会社であれば問題ありません。
しかし、余裕のある保管場所が用意できない、他の業務が忙しいため増加した書類の整理をする暇がない場合、職場で書類が散らかり放題となり、最悪、仕事に支障をきたすケースも出てくるでしょう。かといって書類はいざという時に必要な場合もあるため、ゴミとして簡単に廃棄することもできません。
このような事態を解決する手段が、ペーパーレス化です。書類をすべて電子データとして扱えば、紙を保管する場所の確保、整理するための手間は不要です。
3. 業務効率化に繋がる
経理業務のペーパーレス化は、業務効率化につながる点もメリットとして挙げられます。経理業務のペーパーレス化によって実現できるのが、それまでの書類作成・発行・保管のためにかかっていたコスト削減です。そしてコスト削減が達成できれば、それまで書類の業務のためにかかっていた労力は不要となります。
それにより生まれるのが、経理業務に時間を費やしていた従業員たちの時間の余裕です。時間に余裕ができれば、それまで満足にできなかった他の業務に没頭することができ、これまでの遅れを取り戻すことができます。
また下記のような、それまで手作業でやっていた面倒な業務も、ペーパーレス化によって効率的に処理することが可能です。
- 書類の再発行・修正
- 取引先が発行した書類を発行当日に受領
- 書類の受取・入金業務などの自動化
- 拠点を超えた書類の共有、テレワークにも対応可能
これらの業務を効率的に処理して軌道に乗れば、さらに人件費や各種コストの削減が可能になります。
4. セキュリティ対策に繋がる
経理業務のペーパーレス化は、セキュリティ対策につながることもメリットの一つとして挙げられます。
経理業務をすべて紙で済ませてしまう場合の欠点は、情報漏洩・消失の可能性があることです。社内でのみ管理・保管しなくてはいけない書類を社外に持ち出してしまう、あるいは間違えて廃棄処分にしてしまった場合、情報が外部に漏れてしまう可能性があるでしょう。
また、紙そのものの劣化・破損・雨に濡れるなどによって、紙に記載された情報が読み取れなくなる恐れもあります。
しかし、電子データ化したファイルは、そのような心配は必要ありません。電子データで取り扱う場合、アクセス・閲覧制限を設定しておけば、紛失などのトラブルを回避できます。
また、電子データ化されているため、劣化・破損の心配もなく、消失したとしてもバックアップさえしっかりと行っていれば、すぐに復元可能です。ペーパーレス化を導入することによって、紙の時に発生しやすいトラブルを防止できます。
経理業務をペーパーレス化するデメリット
経理業務のペーパーレス化は多くのメリットがありますが、その反面下記のようなデメリットともいえる点も存在します。
- 初期コストがかかる
- ネットワークの影響を受ける
この2つのデメリットについて説明します。
1. 初期コストがかかる
経理業務のペーパーレス化を導入する際に生じる問題が、初期コストがかかることです。どんな分野においても新しいシステムを導入する際は、初期費用がかかります。新しいシステムを実践するための設備・環境・人材などが必要です。
人材がいない場合は外部へ依頼する必要があり、また自社で専門的な知識・スキルを持った人材を抱えたい場合は、人材育成のための費用も用意しなくてはいけません。
また、ペーパーレス化を導入してもすぐに成果が出るとは限りません。軌道に乗せるためには、しばらくの期間が必要で、その間のランニングコストも計算に入れることが必要です。
また、従来の紙の書類をすべて電子データ化しなくてはいけないため、この作業にも手間と費用がかかります。ペーパーレス化を導入してすぐに効率的になるとは限らず、慣れない作業が続くために余計な経費がかかるパターンもあります。
導入の際は、初期費用・開始後のランニングコストはどれだけかかるのか、事前に計算をしておくことが大事です。
2. ネットワークの影響を受ける
さまざまなメリットをもたらす経理業務のペーパーレス化ですが、ペーパーレス化に限らずネットワークを介して行う作業は、ネットワークのちょっとした不具合によって業務に支障をきたすデメリットがあります。
ネットワークやシステムにトラブルが発生すると起きてしまうのが、データの共有・閲覧・編集ができなくなる現象です。
紙の書類であればネットワークとは無関係なので、いつでも自身のペースで業務を進められます。しかしネットワークに依存しているペーパーレスのシステムは、ネット・システムのトラブルが起きてしまうと大勢のユーザーの業務がストップしてしまいます。
また、大規模なネット・システム障害だけでなく、停電・操作ミスなどの人的な原因などでトラブルが発生する場合も少なくありません。
このようなトラブルが起きることを想定して、バックアップの定期的な実施・セキュリティ対策の確立などを事前に行わないといけません。トラブルが起きても業務が継続できる対策を持っておくことが大事です。
経理業務をペーパーレス化するポイント

経理業務のペーパーレス化を円滑に開始するためには、下記のようないくつかのポイントを押さえておく必要があります。
- 電子帳簿保存法に伴った対応をする
- 社内ルールを整備する
- システムの導入も検討する
この3つのポイントについて、それぞれの具体的な内容を説明します。
1. 電子帳簿保存法に伴った対応をする
ペーパーレス化を進めるためには、電子帳簿保存法が定めた規約に沿った対応をしなくてはいけません。電子帳簿保存法は3つの保存区分が決められており、保存要件はそれぞれ異なります。その3つの保存区分は以下のとおりです。
- 電子帳簿等保存:電子的に作成した書類をそのまま保存
- スキャナ保存:紙で作成した書類をスキャンして画像データとして保存
- 電子取引:電子的に受け取った取引情報をデータとして保存
また、この法律では「真実性の確保」「可視性の確保」が求められています。真実性の確保とは、保存した情報が消去・変更されていない状態です。それを証明するためには、訂正・削除の記録が残るシステムの導入、タイムスタンプ付与などが必要です。可視性の確保とは、保存情報の検索や表示ができる状態を指します。
電子帳簿等保存と電子取引は、2024年1月1日より電子での保存が義務化となっています。紙で作成した帳票や紙で受け取った帳票をスキャナ保存するかどうかは任意です。最近はスマートフォンのカメラでの撮影でもスキャナ保存の要件をみたしています。スキャナ保存した場合は、原本の紙は捨てても問題ありません。
これら法律の決まりをしっかりと頭に入れて、それに対応できる環境を準備することが、ペーパーレス化においては重要な点です。
2. 社内ルールを整備する
社内ルール変更の際の環境の整備も、ペーパーレス化においては重要なポイントです。これまで紙で対応していた経理業務がペーパーレス化すると、それに対応できる経理業務およびそれを取り巻くルールも一変しなくてはいけません。
ルール変更によって起こるのが、慣れていた業務工程の変化です。しかし毎日のように実施し慣れていた作業内容が急に変わっても、早急に対応できるとは限りません。またペーパーレス化という慣れない作業によって、ミスが多発する可能性もあります。
従業員、特にベテランの人材を混乱させないため、そしてペーパーレス化の導入をスムーズに実践し定着させるためにも、早い段階からルール整備をしなくてはいけません。
ルール作成の場合、情報量の多いルールを押し付けるのではなく、作業手順を可視化してわかりやすく提示するなどの工夫が大事です。紙からペーパーレスといった変化を違和感なく進めるのがポイントといえます。
2. システムの導入も検討する
便利なシステムを導入することによって、ペーパーレス化はスムーズに実行できます。おすすめのシステムは下記の2タイプです。
経費精算システム
経費精算システムとは、サーバー上で情報を管理して従業員が受け取った領収書や交通費、宿泊費などを登録するシステムです。電子データによる書類作成や確認、経費精算などの作業をすべてシステム上で実行・完結できます。
経理システムとの連携は、手動入力のもの、csvエクスポート&csvインポートで連携するもの、WebAPIで連携するものなどがあります。
申請する側も各種デバイスから申請を送れるため、経理担当・申請者のどちらにも便利なシステムです。経費精算システムは多様な種類があるため、会社の規模・従業員数に合ったシステムを選ぶ必要があります。
請求書発行システム
請求書の作成から発行、送付といった一連の作業を効率的に行えるのが、請求書発行システムです。請求書の作成だけでなく入金確認・売上計算、あらゆるデータ管理ができる機能が搭載されているタイプもあります。
経理システムとの連携は、手動入力のもの、csvエクスポート&csvインポートで連携するもの、WebAPIで連携するものなどがあります。
数多くのタイプが存在するため、どの機能が自社に適しているのか、事前に確認しないといけません。
電子帳簿保存ならibisStorage
経理業務のペーパーレス化を検討している方におすすめなのが、ibisStorage(アイビスストレージ)です。
ibisStorageは電子帳簿保存法対応をしているため、ペーパーレス化の導入を考えていても、どのように進めていいのかわからないという方でも、安心して利用できます。
ibisStorageは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の「電子帳簿ソフト法的要件認証」を取得しているので、安心・安全は保証されています。
電子帳簿保存法の要件を満たしての電子データ書類の保存が可能なので、初めてのペーパーレス化の導入であっても、普段の業務に支障をきたすことなくスムーズな導入が可能です。電子ファイルでの見積書、請求書、領収書、発注書、発注請書、納品書、検収書などの保存の他、紙の証憑のスキャナ保存も対応しています。
セキュリティ対策も万全のため、膨大な会社のデータも安心して保管できます。
フリープランや無料トライアルもあるため一度、試してみてはいかがでしょうか。