
世界的にインターネットが普及し、その性能が高まるなかで、サイバー攻撃も従来の手口と比べてより巧妙で悪質なものになっています。被害件数も増えており、不安を抱えている方も多いでしょう。
こうした脅威から企業の機密情報を守るには、攻撃の方法に合わせたセキュリティ対策が不可欠です。
本記事では、セキュリティ対策の種類をサイバー攻撃の方法別に紹介します。情報漏洩や不正アクセス、データ改ざんなどの被害に遭う前に、適切な対策を講じましょう。
目次
セキュリティ対策について

企業では、顧客や従業員の個人情報のほか、開発や製品に関わる機密情報などを多く保有しています。これらを多様な脅威から保護する手段がセキュリティ対策です。ここでは、セキュリティ対策の概要や3つの基本を解説します。
セキュリティ対策とは
セキュリティ対策とは、ITツールやネットワーク上のサービスを活用するなかで起こり得るリスクから、企業の機密情報や個人情報を保護する手段です。
セキュリティ対策を怠ると、情報漏洩や第三者からの不正アクセスのほか、災害や人為的ミスによるデータ消失などが発生します。こうしたトラブルは、企業の生産性を低下させるばかりでなく、信頼性や企業イメージを損なう結果にもつながりかねません。
近年、加速するデジタル化にともない業務効率化が期待される一方で、セキュリティリスクの増加が課題となっています。2024年7月に総務省が発表した「令和6年版情報通信白書」では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)におけるサイバー攻撃関連の通信数が、2015年の632億パケットから2023年には6,197億パケットにまで増加したという結果でした。
増え続けるセキュリティリスクの脅威から大切な情報を確実に守るためには、セキュリティ対策を理解し、適切な方法で実施することが大切です。
参照:総務省「令和6年版情報通信白書」
セキュリティ対策の3つの基本
セキュリティ対策は、機密性・完全性・可用性の3つの要素が基本となっています。ここでは、各要素について詳しく解説します。
機密性
機密性は、許可が与えられた人のみデータにアクセスできる状態を保つことです。
社内には、外部に漏れてはならない情報が多数あり、機密性が保たれていなければ情報漏洩やデータ改ざんなどのセキュリティリスクにつながります。万が一、こうしたトラブルが発生すれば、企業の信頼が失墜する恐れがあるほか、責任問題に発展する可能性も否めません。機密性の向上は、会社の信頼性を確保するうえでも欠かせない取り組みです。
重要な情報のアクセス権を管理職以上に限定したり、自社が管理する端末のみ閲覧可能にしたりといった手段を使うと、機密性の向上が期待できます。併せて、パスワードを複雑な文字列に設定し、第三者から推測されないように留意することも肝要です。
完全性
完全性とは、情報が改竄されることなく、正確かつ完全な状態で保たれることです。
従来、サイバー攻撃は個人情報の窃取を目的とするケースが多く見られました。しかし、近年は、データ改ざんにとどめて企業の信用を失墜させる悪質な事例が増えています。
また、外部からの攻撃に限らず、社内における人為ミスでデータ管理を誤れば企業の信頼性が下がる恐れがあるでしょう。そのほか、自然災害によるデータの破損や損失により、事業が継続できなくなるリスクにも留意しなければなりません。
完全性を保つには、定期的にバックアップをとり、データを暗号化して保管する必要があります。併せて、従業員に対するセキュリティリスクの教育も不可欠です。
可用性
可用性とは、必要なタイミングで必要な情報にアクセスできる状態を維持することです。
可用性が維持できなければ、大規模な災害やシステム障害などでデータが損失した際に、速やかに復旧できません。その結果、ビジネス機会の損失や業務効率の低下につながる恐れがあるため、有事の際にはデータにアクセスできない状況を最小限に抑える必要があります。
ただし、可用性の実現には、機密性と完全性の維持が不可欠です。そのうえで、複数のハードウェアを用意して1台が故障しても別で対応できるようにするほか、クラウド上にデータを保管して場所を問わずアクセス可能な状態にしておくと可用性の維持につながります。クラウドサービスでは、クラウド運営会社がハードウエアを多重化して、リアルタイムで何重にもバックアップをとっていて障害に備えています。 オンプレミス(社内サーバー)に比べて障害に強く、障害が起きても復旧までに要する時間も短いのがクラウドサービスのメリットです。
セキュリティ対策の重要性
セキュリティ対策を確実に講じるためには、怠った場合に起こるリスクを把握することが大切です。
たとえばサイバー攻撃や人為的ミス、内部不正などが発生すると、情報漏洩やシステムの停止、マルウェア感染などの被害が想定されます。特に、機密情報が外部に流出してしまえば、企業の社会的信用を失うだけでなく、顧客や取引先から損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
一度失墜した信頼をすぐに取り戻すことは困難です。リスクが生じてからセキュリティ対策を講じても、再び事業を軌道に乗せるには長期間を要することも考えられるでしょう。
こうした事態に陥らないためにも、起こり得るセキュリティリスクの種類に見合った対策を検討する必要があります。
セキュリティ対策の種類
セキュリティ対策は、大きく分けると「技術的」「物理的」「人的」の3つに分類されます。ここでは、セキュリティ対策の種類ごとに概要や対策方法を解説します。
技術的な対策
技術的なセキュリティ対策は、インターネット環境の脆弱性を狙ったサイバー攻撃に効果的です。
たとえば、悪質なウイルスを検知・排除するウイルス対策ソフトは技術的な対策のひとつといえます。ウイルス対策ソフトを使うと、詐欺メールを受信した際に警告文が表示されるほか、安全性の低いWebサイトへのアクセス制限が可能です。
ただし、技術の進歩とともにウイルスの巧妙化も進んでいます。確実に脅威から情報を守るには、定期的に更新することが大切です。
また、機密情報へのアクセスを一定の人に制限したり、データを暗号化したりする取り組みも欠かせません。特に、IDやパスワードは、第三者に推測されない複雑な文字列にする必要があります。パスワードマネージャーを活用すると、覚えにくいパスワードも記録できるため安心です。
保管した情報は常にバックアップを取り、万が一データが消失した場合も、速やかに復旧できる体制を整えておきましょう。
物理的な対策
セキュリティリスクから情報を守るには、インターネット上の技術的なセキュリティ対策だけでなく、物理的な対策も欠かせません。
たとえば、サーバールームのセキュリティを強化する必要があります。セキュリティゲートを使って入退出管理をするほか、カードキーや生体認証を活用する方法も効果的です。
また、監視カメラの設置や警備員の配置なども、第三者の侵入を防止に役立つでしょう。
在宅ワークが増加している昨今は、自社が管理する端末を外部に持ち出すケースが増えました。ルールを設けずに持ち出しを許可すると、脆弱なネットワークに接続して不正アクセスにつながる恐れがあります。さらに、持ち出した従業員の不注意で、機密情報を覗き見されたり、端末を置き忘れたりする事例も少なくありません。
端末を外部に持ち出す際は、覗き見を防ぐフィルムを貼り、持ち出し制限を設けるように留意しましょう。
人的な対策
セキュリティリスクは、従業員の管理ミスや内部不正などの人為的な原因で起こるケースも少なくありません。こうしたトラブルを避けるには、人的なセキュリティ対策を講じる必要があります。
たとえば、個人情報保護や情報セキュリティに関するセミナーを開催して、セキュリティ対策の重要性を従業員に周知させることが大切です。併せて、コンプライアンス研修を実施すると、内部不正の抑制につながります。
特に、情報漏洩は、自社だけでなく取引先や顧客に対しても重大な損害を与えるリスクがあり、個々の従業員が重要な情報を取り扱っている点を自覚しなければなりません。定期的に情報をアップデートしながら、常に適切なセキュリティ対策ができるよう、社内全体で対応することが肝要です。
また、パスワードは、第三者が容易に推測できないような複雑な文字列に設定し、外部に漏れないように徹底した管理が求められます。不用意に電子メールでパスワードを共有したり、手書きのメモをデスクに置き忘れたりしないように留意しましょう。
セキュリティ対策によって対応できるサイバー攻撃の種類と対策
セキュリティリスクにつながるサイバー攻撃には、多様な種類があります。ここでは、主なサイバー攻撃の種類を4つ紹介するとともに、対策方法を解説します。
マルウェア
端末やユーザーに脅威をもたらす悪質なソフトウェアをマルウェアといいます。
たとえば、害のないプログラムに見せかけて感染させる「トロイの木馬」やシステムに入り込んでユーザーの動向を監視し、気づかないうちに個人情報を漏洩させたり、不正サイトに強制的に移動させたりする「スパイウェア」などもマルウェアのひとつです。
マルウェアの感染を防ぐには、ウイルス対策ソフトやスパイウエア検出ツール、ファイアウォールなどのセキュリティツールの導入が役立ちます。
ただし、マルウェアの数は膨大であり、ウイルス対策ソフトだけでは対処しきれません。そのため、OSやアプリケーションの脆弱性を解消するうえで効果的なセキュリティパッチを併用するとよいでしょう。また、ウイルス対策ソフトは定期的にアップデートして、最新の状態を保つことも重要です。
ランサムウェア
ランサムウェアも、マルウェアの一種であり、システム内に入り込んでデータを暗号化し、使えない状態にします。そのうえで、データの復旧と引き換えに身代金を要求する手口です。2017年には、ランサムウェア「WannaCry」が世界中で猛威を振るい、多くの企業が業務停止を余儀なくされました。
ランサムウェアに感染した場合、データの復旧は容易なことではなく、たとえ身代金を払ったとしても確実にデータが戻るとは限りません。
こうしたトラブルを避けるには、マルウェア感染防止と同様に、ウイルス対策ソフトやセキュリティパッチの導入などが重要です。
万が一、ランサムウェアの感染が疑われる場合は、ほかの端末への感染を防ぐためにLANケーブルを抜き、ネットワークから隔離しましょう。
フィッシング攻撃
フィッシング攻撃とは、実際にある企業からのメールを模倣したメールやSNSにマルウェアを潜ませて送るサイバー攻撃です。添付されたファイルを誤って開封すると、強制的に悪質なウェブサイトに誘導されたり、個人情報を抜き取られたりする恐れがあります。
近年、フィッシング攻撃の手口が巧妙化しており、本物の電子メールやWebサイトと見分けがつかないものも少なくありません。たとえば、アルファベットの「O(オー)」の代わりに「0(ゼロ)」を使って、あたかも実在するURLやメールアドレスのように見せるケースが増えています。
フィッシング攻撃の被害を避けるには、フィルタリングを活用して不審なサイトをリスト化してブロックしましょう。また、従業員に対するセキュリティ対策教育で、フィッシング詐欺を見分けるポイントを周知することも重要です。
ブルートフォース攻撃
ブルートフォース攻撃は、あらゆるパスワードのパターンをすべて使って不正アクセスするサイバー攻撃です。日本語では「総当たり攻撃」とも呼ばれ、万が一、パスワードを解読されれば、情報漏洩やシステムの乗っ取りなどが発生する恐れがあります。
ブルートフォース攻撃を回避するには、第三者が容易に読み取れない複雑なパスワードに設定することが肝要です。たとえば、英語・数字・記号を織り交ぜた12文字以上の文字列にすると、解読されにくくなります。
また、同じパスワードを複数のシステムやアプリケーションで使い回すと危険であり、それぞれ違う文字列に変えたほうが賢明です。
そのほか、生体認証や特定の情報とパスワードを組み合わせる二要素認証や事前に登録した端末のみアクセスを許可する端末認証機能の活用も役立ちます。
セキュリティ対策は「ibisStorage」で一元管理しよう
本記事では、サイバー攻撃の種類ごとに適したセキュリティ対策を解説しました。サイバー攻撃と一括りにしても、マルウェアやフィッシング攻撃、ブルートフォース攻撃など多様な種類があります。近年は、どのサイバー攻撃も巧妙な手口を使っており、十分なセキュリティ対策を講じなければ対処できません。
ibisStorage(アイビスストレージ)は、高度なファイル保護機能やアクセス権限コントロール機能を搭載した安心・安全なクラウドストレージサービスです。未承認の端末からのアクセスをブロックする端末認証機能や決まったIPアドレス以外からのアクセスを制限する接続元IP制限機能などのセキュリティ機能が搭載されています。
また、万が一、ランサムウェアに感染し、データを暗号化された場合に、暗号化前のファイルを取り出せるランサムウェア対策機能も備わっている点も特徴です。セキュリティ対策に悩んでいる方は、ibisStorageの利用を検討してみてはいかがでしょうか。